#20 撮影日誌④

2013年6月21日

5月27日~5月30日。

森の中での第一次ロケが撮影が終わり、今日から再び森の中での第二次撮影が始まる。

今回は、特にナイトシーンなどがあり、体力の消耗度はピークに達する。今回美術を担当したのは進行・高木重因装飾・青祐一・持道具・柳沢大介。重たい装飾品など何往復もし夜の森に搬入しなければならない。

深夜の撮影は危険だ。本物の霧が発生するため、森の中に数十個の懐中電灯を並べ、スタッフが迷子にならないように道しるべを作る。

今回、撮影に協力していただいた「NPO法人 フイルムコミッション富士」の勝山夫妻が、森の中までカレーライスや豚汁などののデリバリーをしてくれる。

疲れは食欲に如実に表われる。カレーを半分残しているスタッフもいる。しかし、最年長のカメラマン山崎は相変わらずの食欲旺盛、安心する。s-0527-コートの女発見-_MG_0184

 

撮影も半ばになり、さまざまな不安要素が襲ってくる。

今まで撮り終えたものが、果たして良いのか悪いのか・・・・。

フランス・ヌーベルバーグ(新しい波)の旗手、フランソファ・トリュフォー監督は、その著書『トリュフオーの映画術』やインタビューで、「映画の撮影に入る前は、自分は今、傑作を作ろうとしている。おそらくこの作品は映画史に燦然と輝くであろう、と自信に溢れているが、撮影中番になると、私は、なんという駄作を作っているんだろう・・・途中でこの映画製作を止める勇気があれば、恥をかかずに済むのに・・」と映画監督の不安を語っている。

大人は判ってくれない」(1959年)「突然炎のごとく」(1961年)など、繊細で瑞々しい映像を提供してきた実力派監督でも、撮影中番になると不安が襲ってくるのだ。トリュフォーは、のちに映画監督を主人公にした映画「アメリカの夜」(原題・疑似夜景・1973年)で、撮影の進行を軸に監督の苦悩と様々な人間模様を描き、カンヌ映画祭で評価を得た。

今回「樹海のふたり」の演出部は監督を含め4名。
チーフ助監督は近藤有希。数々のオフシァター系の映画をこなして来た筋金入りの映画人。カメラの山崎裕の紹介でスタッフ参加。
チーフは主に撮影スケジュールを組むのが、最も重要な仕事。役者のスケジュールの把握、現場の制約・・・様々な条件を考慮し、最も適切と思えるスケジュールを「切れる」かが、その力量を問われる大変なパート。

 

右から二人目、チーフ助監督・近藤有希。左端がサード助監督・大城義弘。

右から二人目、チーフ助監督・近藤有希。左端がサード助監督・大城義弘。

チーフはトライアスロンに挑戦するほどの体力の持ち主で、温和で素朴な人柄。そして、緻密に熟考された撮影スケジュールの提出。彼の奥深い洞察力と人間力で現場は支えられた。
セカンドは岡村 拓。映画の現場は初体験だが、この映画の立ち上がりから仕上げまで、一番長く関わった青年。
サードは、沖縄出身の大城義弘。サードは常に現場にいて、カチンコを叩き、小道具・持ち道具の担当。無口だが、粘り強く仕事をこなしてくれた。
この3名はともに日本映画学校の出身。この3名に励まされ、助けられ、過酷な現場を乗り切る事が出来た。s-0607-三湖台撮影の様子-_MG_1846

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